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川崎淳与さんから、心に残る贈り物を頂いたのは十数年前。包装のリボンにちょこんと結び文が添えてあった。さりげなく送り主の息遣いが伝わってきて、感服した記憶がある。華美なラッピングブームに反し、これでどうだといった気負いを感じさせない包装紙に、送り主の温かさをそっくり包む、そんなラッピングだった。「私にとって、結び文は特別なことでは無いんですよ。今から四十年くらい前でしょうか、連絡事項を結び文にして小学生の息子の手に握らせ先生に渡していました」。そこには、「大げさにしない」という川崎さんの心遣いがあった。「先生もそれに親しみを感じて下さった様子で、仲間うちの話題になっていたとか」。
![]() ![]() 礼儀を重んじながらも、心が伝わるような自分の表現方法が川崎流。「もちろん、時、所、場面を心得なければいけない際には、それなりに合わせますが、『こうじゃいけない』という観念的な世界は私の中にはないんです。大事なのは気持ちが相手の心に届くことで、不快感を与えなければ、極端な話、何でもあり、と思うわ(笑)。そして奥ゆかしさが大事」。あえて結び文を封筒に入れることもある。封を開けたとき、ハッとする。「受け手が楽しいことの始まり≠フような気持ちになれば嬉しい」。
ある日、川崎さんのラッピングに目を留めた知人から、「デパートで、ラッピングアドバイザーを探しているんだけど」と声がかかり、大手百貨店でその役を果たすことになった。お行儀よい包み方より、味のあるラッピングなら得意という川崎さん、ぶきっちょな人のために、『おしゃれにラッピングブック』 という本も出した。ラッピングというキーワードが世間に通用し始める以前のことである。 ![]() ![]() 一見、自由発想的な川崎さんだが、終戦直後の荒波の中で、たとえ両親がいなくてもたくましく生きていけるようにと、父親から厳格に育てられた。「四人姉弟の一番上で、共働きだった両親に代わってみんなを世話しなくてはならないし、女性のたしなみも学べ、簿記を勉強して経営能力も養えと、父の要求は格別私に厳しかったですね」。では、いつ頃から自由な感覚が芽生えたのだろう。
「生来、のびのびした性質だったかな。妹と二人部屋でしたが、インテリアをあれやこれやと楽しむのは私。妹より夢見るタイプです(笑)。自営業の両親は、仕事が終わると、よく洋画を観に連れて行ってくれました。昔の洋画はエレガントで憧れましたね。その体験もいろんなことを閃かせる源になったと思います」。 明治男と大正女の両親は時代の割にモダンな心の持ち主だった。「アイスクリームにワインをかけたりする父。母は控えめな性格なのに、時代の先端を行くデザインを好んでいましたね」。厳格な家庭だったものの、感性の部分の自己表現について、両親が彼女を縛り付けなかったのが、後に「川崎さんらしさ」を開花させることにつながったようだ。 ![]() 子育て期間中でも、ずっと自分の生き方を考えていた。創造する作り手になろうかと、育児の合間に立体や染色、ステンドグラスなどいろいろ試みた。子育てにひとまず区切りがついた頃、デパートからラッピングコーディネーターや、講師などを依頼され、その後ギャラリーの世界へ。「自分の生き方について、かなり模索しました。でも子どもと向き合うことを中途半端にしたくなかったから、子育てを終えてからと心に決めていましたね。夫や家族と一緒に感性を分かち合えるものをやりたいというのもありました。結果、サポート的に人の心を豊かにできることに携わるのがあっていたみたい」。
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ギャラリーでは、「生活に入っていくもの」という視点から、アート、陶芸、ファッションなど多ジャンルの展覧会を企画する。発信者と受信者を結ぶ役割だ。「作る人、売る人、買う人というそれぞれのポジションを超えて、感動を共に味わい、その喜びが広がっていく。作家、ギャラリー、お客様は三位一体で、それがパワーを生むと思っています。ギャラリーは敷居が高いと思われるようですが、そんなことはないんですよ。味のある人たちが集まるから、素敵な交流の場。もちろん、作品が売れれば嬉しいし励みになります。でも観るだけでも、作り手はお客様の反応で勉強し、よりいいものに向かって努力するんです。これって、お客様も上質な文化を育てることに関わっていることでしょ。素晴らしいことですよね。そう思いません?」。
衣食住と分野の分け隔てなく面白いと思えば企画する。数年前に、和菓子職人として見習い中の青年がギャラリーを訪れた。「いつか彼が納得いく和菓子を作れるようになったら、和菓子をテーマに展覧会を企画しようと決めてるの」。これからの時代を生きる若者に、川崎ファンが多い訳を垣間見た。
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結び文をはじめ、川崎さんの生き方、暮らし方には「心のゆとり」を感じる。「私、毎日笑っていたいんです。悲しいことや辛いことがあってもね」。お訪ねした川崎邸には、日常を楽しませる要素が詰まっていた。こんなところに?というコーナーで小さな彫刻がこちらを向いて笑っていたり。
「家の中の雰囲気を芸術文化的に、というのではなく、惰性に流れがちな生活の現状を一段引っ張り上げる心地よい刺激を、暮らしに取り入れたい。ただいま、と帰ったときに疲れがとれる空間がいいでしょ。植物が家の中でいい空気を醸し出してくれるように、好きな物たちがホッとさせてくれます」。 川崎さんは、特別な日でなくても、毎日キャンドルをつける。「キャンドルは必需品。和やかな灯りに包まれた物や空間が、創造的にさせてくれますね」。子育て中も、キャンドルを灯していた。「なのに彼らは誕生日みたいに、我先にとばかり消したがるの(笑)。でも四十半ばになった彼らが今、自分たちの家庭で同じようにキャンドルを灯している様子を見ると、私の精神が伝わったかなあと少し嬉しくなります」。 ちょっとしたことや物で、ふっと心が軽くなったり、ときめいたりした経験は誰にでもあるだろう。川崎さんはそのちょっとしたことを見つけるのが上手なのかもしれない。いや、私たちにとっても、難しいことではないような気がする。 「おおらかで、豊かな心を持つと、それは伝染していく」、そんなシンプルなことを心に留めておくと、日常に、ハッピーな刺激がでてくるに違いない。「毎日笑っていたいから―」、そういう日々の暮らしが、みんなに波及していくことを、川崎さんは信じている。 ![]() 頂きものなどのお福分けのとき、大げさにならないように、でも少しお洒落に包みたいものです。
川崎さんに、不器用な人にも心強い、小粋なラッピングを教えて頂きました。
![]() 「包装紙にメッセージが書かれていると、開いた人がハッとして楽しいでしょ?」(川崎談)
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